小岩井式「超ワガママ王」

「さあ、超ワガママ王初代チャンピオンに輝いた
　シルリー・グランカインのワガママ模範演技ですが・・・
　実況はワタクシ、料理ギルド長エルサ、そして」


「解説は『100ｋｍまでなら歩いて交通費ゲットだぜ』でお馴染みの
　雑貨店主クリスティンです」

「それでは早速、初代超ワガママ王、シルリー・グランカインの入場です！」



ワーワー



「『喫煙所以外でたばこを吸い、予防注射の列以外はすべて割り込み』で
　おなじみのワガママ界の帝王、さすがにカンロクがありますねー」





「東京無線を呼べ」

「おおっとぉ！？いきなり出ましたタクシーの要求ですっ！！
　呼ぶのか、呼ぶのか東京無線をーっ！！！」



「花道から演舞場までいいとこ３０ｍくらいですけどね」


「恐ろしい、実に恐ろしい、乳母日傘を目に中に入れても痛くないから
　縦のものを横にもしない大暴君、さすがのパフォーマンスです！」



ワーワー！



「さあ、時間いっぱいです。今日は誰に、どのようなワガママをかますのか！？
　演武開始の・・・いまゴングですっ！！」

 

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カーン

　


「ＺＺＺ・・・」






「寝てる！？」


「10分という長丁場ですからね。
　序盤は寝て体力の温存を図る、いつものスタイルです」

 

「なるほど、あくまで自分のスタイルを貫くと。
　チャンピオンには緊張はないようですね」

 

「もうかれこれ、５分ほど寝ていますが一向に動く気配がありません」


「いやー、観客が満員の会場でこんなに寝れるなんて、すごい図太さです。
　文字通り傍若無人、『傍らに人無き若し』ですね」



「あっと！？動いた！起きました！」

「ん」






「おっと無言でお付きの女性に手を差し出したぞ？」

「はい」

「そしてお付きの女性はそのまま・・・出ました、ロマネコンティ！」


「彼らの日常を想像させますね。ここらへんの連携プレイはさすがです。
　ていうか、小岩井さんはロマネコンティ以外の高級酒を知らないんですかね」

「この高級ワインをどうする、チャンピオン・・・・
　おおっとっ！！高級酒ロマネコンティを一口飲んでぶちまけたーっ！！！」






「ぬりいよ」



「申し訳ございません」

「なんとなんと、『赤ワインはあまり冷やさない』という
　ワインの美味しい飲み方を忠実に守って、最高の状態で出した
　お付きの女性の忠義心をあざ笑うかのような高等テクニックーっ！」






「シリアル」



「はい」





「起きぬけの食事にシリアルを要求です。この辺りは割と庶民的ですね」



「いやー油断はできませんよー、ここからが真骨頂ですからね、彼の」

「お付きの女性が今、新鮮なミルクをかけたシリアルを
　シルリーのところに運びます。さあ、どう出るのか？」

「ここからです、ここからです」




 

「僕は牛乳でおなかが痛くなるんだよっ！！」

「も、もうしわけございませんっ」

「そっちっ！？」

「誰もが『持ってきたシリアルが気に入らない』という展開を
　予想していたことでしょう。しかしまさかミルクの方とは・・・！」

「ていうか、だったらなぜシリアルを所望したのか、ということですね。
　その辺が超ワガママですよ」

「さぁ、お付きの女性に下がらせたシルリー、おもむろに携帯を取り出しました」

「どこに電話をかけるんでしょうね」

「ああもしもし、ココイチ？大至急カツサンドもってこい。
　５分以内だぞ、いいな」

「カレーハウスココイチにカツサンドの出前要求っ！？」
 

「店長さんもまさかカレーライス屋さんに
　カレーでもライスでもないものの注文がこようとは
　夢にも思わなかったんじゃないですかね」

「しかしもう時間がありませんね、あと３０秒。
　カツサンドは間に合いそうにありません」

「ていうかいたずら電話だと思って来ないかもしれないですしね」

「さあ、どうする・・・？お、また電話ですね」

「ココイチさんへの電話はちょっと失敗でしたからねー、次はどこへ・・・」

 

 

「もしもし、テルミヌス？」

「テルミヌスだー！！今度はテルミヌスの街に
ワガママかますつもりなのか、チャンピオン！？」

「そ、そんな！無茶苦茶だ！」



 

「ねえ、いいじゃん」




 

「何を話しているんでしょうかね」

「ねえ、テルミヌスちょうだい。いいじゃんよー」

「大胆すぎる要求ー！」

「『いいじゃん』押しですけど、これはさすがに無理でしょう」

「うん、ありがとう」

 




「通った！？」

「チャンピオン、なんと王都テルミヌスを手中にーっ！！」

「私、同じワガママ人として涙が止まりません。
　彼は全てのワガマミストに勇気を与えてくれたのです！」

「ありがとうー！ありがとう、チャンピオン！いや、テルミヌス王ーっ！」

 



















「シルリー様はこうやって王子になったんですのよ」

「うそくせー」

「ていうか、ワタシたちを勝手に出さないでよ、カレンさん」