小岩井式「テルミヌス料理コンテスト」

「ねーねー、ちょっとエルサー」



「なになに、どうしたの。こんな暑い中元気ねぇ」



「これ見て、これ見てっ！」



「ん・・・？『テルミヌス料理コンテスト』？」


「うん、なんでも収穫祭の期間中、シルリー王子のところに料理を持っていって
　『おいしい』って言わせたら１００万テルもらえるらしいよーっ」



「ホント・・・？でもあのヘンクツ王子が素直に『おいしい』なんていうかしら」



「でもさ、料理ギルド長が挑戦しないって言うのもどうなんだろ？」


「まぁ、ねぇ・・・賞金なんかどうでもいいけど
　料理ギルドの長が『逃げた』とか言われるのもシャクねぇ」



「え？賞金はどうでもいいの？じゃあボクが・・・」



「なんでそーなる」

 

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「うーん、駄目だったねぇ」


「考えてみれば相手は王子、舌は肥えてるでしょうから
　意外と大変ねぇ、これは」



「まだお祭りの期間はあるよ、再チャレンジするんでしょう？」



「もちろんよ」









「・・・私、ギルドやっていく自信失くしちゃったなぁ」



「おいしいと思うんだけどなぁ、王子ってば味音痴なのかな」



「お二人さん、お困りのようですね」



「あなたは！」



「カードギルド長のブライアさん！」



「王子はどうあっても『おいしい』と言わないつもりですよ」



「え？そうなんですか？」



「どうやら後ろで神官の・・・」


「カレンさんかっ！！」



「あのヒト、実はテルミヌスの影の女王な気がしてきたよ」


「どうやらカレン嬢と賭けをしているようでしてね。
　王子は『おいしい』とは決して言わないですよ」



「そんな・・・信じられない」

「これを使ってみてください。
　東方の島国の子守ロボットが持っていたといわれる
　伝説の調味料です」



「こ・・・これは・・・！」



「味のもとのもと！」



「で、伝説の超マズ料理『ジャイアンシチュー』を神の雫に変えたという・・・」


「それを使っても王子が『おいしい』と言わなかったら
　そのときは糾弾してもいいんじゃないでしょうか」



「そうね・・・わかったわ！」










「ちょっと、エルサー」



「何」


「予想通り王子は『おいしい』って言わなかったけどさ、
　どうして何も言わずに引き下がったの？」


「私の料理が本当においしくなくて
　『おいしい』って言わないわけじゃないことがわかったからもういいわ」



「えー、賞金はー？」


「最初から興味ないって言ってるでしょ。
　それにだれか他に『おいしい』って言わせられるわけないんだし」



「・・・」



「なによ」



「よーし、ボクが言わせて見せるよ、『おいしい』って」



「えっ！？お米を洗剤で洗っちゃうアンタがっ？？」



「やだなぁ、今はもう無洗米を使ってるよぅ」



「問題はそこじゃないでしょ」








「さて・・・今日はクリスが料理を持ってくる日だけど・・・
　あ、クリスー！・・・・えっ？なにそれっ！？」



「ふっふっふっー」






「・・・やれやれ、アンタ、お金が絡むとホントに悪知恵働くわね」



「これも王子をぎゃふん（死語）と言わせるためなのだー」



「ぎゃふん、じゃなくて『おいしい』でしょ」









「はっはっはっー、どうだいカレン。
　いつも君にいじめられてきたけれど、今回ばかりは僕の勝ちのようだね」


「王子がこうも簡単に一生懸命料理を作ってきた民の心を踏みにじれるとは
　思いもよりませんでしたわ」


「ぐっ・・・な、何とでも言え。
　僕は誰に恨まれても絶対『おいしい』とは言わないぞー！」

召使い　「王子、次の挑戦者がお待ちです」



「よし、入れ」




 

「やっぽー、王子ー！」

「ほう、雑貨商のクリスティンか。
　エルサでも僕に『おいしい』と言わせる事ができなかったのに
　キミに僕を落とすことができるかな？」



「できますとも・・・こちらをどうぞっ！！」

「う・・・、こ、これは・・！」

「・・・どうです？王子」



「ひ、卑怯な・・・！」



「あらー、卑怯はお互い様ですよぅ～。ささ、みんな、せーのっ！」

？？？　「おうじさまー、おいしかったー？」



「あ、ああ・・・おいしかったとも」



「いやったぁぁぁっ～！！」



「あらら」





「よかったねぇ、みんなー！」

子供Ａ　「うんーっ！あたしたちがねー、はじめてつくったんだよー」

子供Ｂ　「すごくたいへんだったからぁー」

子供Ｃ　「でもいっぱいがんばって、おうじさまのためにつくったんだー」



「ありがとう。みんなこれからもがんばって勉強するんだよ？」

子供たち　「はーい」

 

「王子、敗れたりぃ～っ！」
























 

「・・・さて、これでナルプロンの森に続いて
　シェバーズ雪原もわたくしのものですわね、王子」



「くぅ・・・テルミヌスの領土がどんどんカレンの手に・・・」